ページトップへ
ページ最下段へ
福祉総合サイト「ハピネス」 知ることから始めよう、快適な社会作り。

HOME > 記事 > 訪問介護の仕事をして

訪問介護の仕事をして

HN:みな

訪問介護01

訪問介護の仕事を通して、様々なことを学びました。

そんな私の体験談を紹介しましょう。

スポンサードリンク

訪問介護をなめていた私

訪問介護の仕事に就いたのは、私が24歳の時でした。


それまでは2歳になる娘を保育園に預けながら、有料老人ホームで働いていたのですが、職場の人間関係に嫌気がさし、訪問介護事業所の面接を受けました。


無事に面接に受かり、訪問介護員の研修が始まりました。

施設介護の経験しかなかった私は、会社から渡された資料を熟読しました。

そして、先輩介護員の指導の下、しっかりと在宅介護のルールや訪問介護という仕事について学んだのです。


それまで訪問介護員(ヘルパー)の事を半分「家政婦さん」と思い込んでいました。


ところが、実際は自宅訪問しながら安否確認したり、身辺変化の報告を受けたり、介護度が低下していないかを見極めるなど、大切な仕事を担っていることを初めて知りました。

役に立たなかった私

いざ訪問介護の仕事を始めて、自分がいかにちゃんとした家事をやっていなかったかを痛感しました。


掃除、洗濯、調理、買い物などの「生活援助」または「生活介護」という業務の際、同行の先輩介護員から掃除の仕方で何回も注意を受けたのです。


「掃除は上からが基本なので、まずはハタキがけから」

「ふすまのキワのホコリがたまりやすいところなどは、掃除機の隙間ノズルを必ず使う」

「水を使いすぎないように注意する」


など色々な注意を受け、私の頭の中は真っ白になりました。


一通りの仕事を終えて介護記録を記入していると、利用者さんが「みんな最初は初めてなんやで。懲りずにまた来てな」と慰めの言葉をかけてくれました。

スポンサードリンク

Mさんの生活援助

訪問介護02

そんな中、どのヘルパーさんも続かないというMさんの生活援助が私に任されました。


Mさんは82歳。

元々は掃除婦として働いていた女性のため、掃除の仕方に対するこだわりが強すぎて、自分で訪問介護を希望したものの、長続きするヘルパーがいないとのことでした。


そのような方の自宅掃除の仕事が、新人の私にできるような気は微塵もしませんでしたが行かなければなりません。 初めての訪問時は、とても緊張していたことを覚えています。


Mさんはとても小柄ですが、杖をついて歩く姿にオーラが漂っています。

ビシっと着物を着込んで出迎えてくれました。

すると、私を見るなり「年寄りヘルパーは仕事にならんから、若い者を連れてきたな」と笑いながら言いました。

「さすがにヒヨコにムチは打てんわ」と言って、悪い足をおさえながらも、ハタキがけや掃除機のかけ方・窓ふきなどを丁寧に教えてくれたのです。


Mさんの教えがあったおかげで、どの家に行っても恥ずかしくない家事援助ができるようになりました。今ではいい思い出です。

思い通りにいかない訪問介護の仕事

訪問介護03

訪問介護の仕事は、利用者さんの家のルールによって介護方法が違っています。

掃除の仕方・料理の味付け・洗濯物の干し方など、それぞれやり方が異なるのです。


家は利用者さんにとって「城」であり、我々訪問介護員は最初「よそ者」というポジションからスタートします。


施設介護との大きな違いは、まさにその点にあるのかもしれません。


挨拶から介護記録の記入に至るまで、訪問介護の仕事の流れが記載されたものを「介護手順書」といいます。

その介護手順書には、あらかじめその家で何をしなくてはいけないかが書かれていて、その訪問先に他の訪問介護員が急にピンチヒッターで行かなくてはならなくなった場合でも対応ができるようになっています。

ですが、介護手順書があることで役に立つのは家の見取り図くらいで、実際に必要な業務内容は利用者さんに連絡し、確認を取りながら決めていくことがほとんどでした。

訪問介護を通してお互いに成長を!

訪問介護04

私が、まだ訪問介護の仕事に慣れていない頃から、週3回訪問していたSさん宅。


Sさんは65歳の時に脳梗塞で右半身まひになり、少し拘縮がありました。

ほぼ毎日朝夕にヘルパーの派遣があり、コミュニケーションに問題はないのですが、とてもきれい好きな上に、ヘルパーの態度や言葉遣いなどに対し神経質で、熟練ヘルパーさんも手を焼く利用者さんでした。


Sさん宅に訪問するようになって半年くらい経った頃、当時2歳の私の長女が風邪をこじらせ、肺炎を起こし入院することになりました。

他にも私が担当していた利用者さんはいましたが、中でも週3回行っていたSさんの訪問介護を私が休みの間2週間も誰が行うんだろうと心配になりました。

Sさんは神経質で初めての介護員が嫌いですから、きっと顔見知りの介護員が担当になるのだろう思っていたのですが……。


私が仕事に復帰しSさんに会えた日、「あんたが休むから、私は毎日先生やらなあかんかった。ホンマ疲れた」と言われたのです。

どうやら調整がうまくいかず、ほぼ毎日違う人が訪問してきていたようで、それはSさんにとって初めての経験でした。

利用者さん自身の気づき

Sさんはこうも言っていました。

「私がどれだけ尖っとるか、どれだけ細かいか、よう分かった」と。


介護手順書をもとにヘルパーはSさんの訪問介護の仕事全般(排泄・掃除・調理)を頑張っていたのですが、誰もSさんの思い通りに作業してくれる人はいなかったといいます。

それでSさんは自分の神経質さに気づいたんだそう。

手順書があっても、お互いの意思疎通までは出来なかったためにヘルパーと利用者の間には少し妙な空気が流れ、雰囲気があまりよくなかったようです。


「私も誰にでもわかりやすくビシっと注意できるようにならなね」と、Sさんは笑っていました。

スポンサードリンク

最初は驚いた仕事内容

訪問介護05

今は少なくなりましたが、私が訪問介護員として勤務し始めた2005年頃には、訪問介護の仕事内容の中で『生活援助1時間、掃除のみ』というものがありました。

当時20代前半だった私は、「え?掃除にそんなに時間いる?めっちゃ時間余るやん」と思いました。

というのも、自分の家を掃除するのに、20分くらいしかかけていなかったからです。


Yさんは72歳女性。

呼吸器の病気を長年患っており、在宅酸素療法を行っていました。

買い物や調理はかろうじて出来るものの、掃除だけは危険という事で私が派遣されることに。


最初は「掃除だけで1時間とれるよ、ラッキーやね」と他の訪問介護員に言われましたが、1時間もかかるということは、相当綺麗好きなんじゃないだろうかと不安でした。

訪問介護の仕事の中で、掃除には当時まだ自信が無かったため、そう感じたのです。


挨拶と自己紹介を終えるとすぐに、掃除に取り掛かりました。

家は平屋の一軒家で、玄関、廊下、LDK、寝室、浴室、トイレと全域の掃除。

マンション住まいしかしたことのない私には、結構な肉体労働だったことを覚えています。

掃除の極意を学んだ

訪問介護06

Yさん宅では、次のような手順で掃除を行いました。

  1. 玄関掃き掃除
  2. ハタキがけ
  3. 掃除機がけ
  4. 拭き掃除(床を含む)
  5. お風呂掃除
  6. トイレ掃除
  7. 片付け

慣れるまでは、隅々まで掃除機がけが出来ていない、雑巾の絞りがあまい、風呂の鏡が光っていない、トイレットペーパーの折り方がきたないなど、何回もYさんから注意を受けました。


介護の仕事とはおおよそ関係ないことばかりなので、「こんなことするために介護職選んだんだっけ?」と掃除中にふと我に返ったりもしました。

ですが、いつも最後にYさんはこう言ってくれました。

「ごめんな、わたし細かいやろ。でも懲りんと来週も来てな。」と。

この淡々と放つ一言のおかげで、Yさんがガンで入院されるまでの8ヶ月間、私は訪問介護員として「掃除1時間」を極める事が出来、最終的にはどの訪問先でも通用する掃除テクニックを身につけていました。

垣間見える利用者さんの生活

訪問介護07

毎週掃除をしに自宅に伺わせてもらっていると、利用者さんの性格や生活風景が見て取れます。


汚さないようきれいに家を使っている方、お仏壇をとても大切にしている方、お友達が多く訪問する方、安売りがあるとついつい買ってしまう方など……。

前回の訪問時との室内の違いを見比べると、いろんなことがわかって面白くもあります。


中でもYさんはとても女性らしい方で、いつもお花を買ってダイニングルームに生けていました。

天国でもきっとお花を愛でていらっしゃることでしょう。


筆者情報 筆者「みな」
■みな

訪問介護の仕事をすることで色んな人とかかわり、多くのことを学びました。



スポンサードリンク

記事
2017年11月の記事
幼稚園と保育園…発達障害児の場合  発達障害の子供と療育の大切さ 発達障害?我が子の言動にみる兆候
2017年10月の記事
介護職の失敗談~失敗からの学び 訪問介護の仕事をして 福祉の仕事をしてきた私の体験談 介護福祉士の体験談 介護職の失敗談~相手の事を考える
2017年9月の記事
特別児童扶養手当と発達障害児 障害児の就学~我が家の体験談 障害児の学校選び 子供に合った放課後の過ごし方を! 子供が放課後を楽しく過ごすには?
2017年7月の記事
手話を仕事に活かそう 手話の資格を取る方法 手話は英語だと違うの!?
2017年6月の記事
手話を学ぶ事にしたきっかけ 手話を覚える方法 手話をどこで学ぶ?【独学以外の方法】
2017年5月の記事
サイクリングで筋トレをしよう!  スポーツ吹き矢の健康効果とは 社交ダンスは認知症予防に効果的? 卓球が高齢者に与える効果
2017年4月の記事
ゲートボールは高齢者に大人気!  ウォーキングで健康に! フラダンスがエクササイズになる!? ボウリングは健康づくりに最適 体操で介護予防を!
2017年3月の記事
健康づくり のためのボランティア 高齢者福祉施設への慰問 児童養護施設への慰問 手話のボランティアでスキルアップ! 盲導犬のパピーウォーカーを経験して
2017年2月の記事
ノートテイクで聴覚障害の学生を支援! パソコン を使った点訳のボランティア 病院ボランティア で子供と遊んでみて 高齢者 の見守りボランティアの体験 子供 の学習支援のボランティア
2017年1月の記事
ケアマネージャーは苦労が沢山! ホームヘルパー としての注意点とは? ホームヘルパーの資格を取った方法 介護福祉士 としての酷い失敗談 ケアマネージャー として反省した失敗談
2016年12月の記事
介護 の仕事に就くきっかけをくれた母 療育 に携わりたいと思う理由 介護福祉士 の仕事で求めるやりがい 介護福祉士 は苦労が多く報われない ケアマネージャー として働く魅力とは?
2016年11月の記事
パーキンソン病の発症から介護認定まで 福祉用具は生活に欠かせないもの 義足 だった義父の生活 車椅子 を使う私が一番欲しい福祉用具
2016年10月の記事
介護の相談は介護のプロに! 実母の介護は自分との格闘 介護のストレスを解消するための準備
2016年9月の記事
大変だった息子の小学校生活 ADHDの女子高生の日常生活 通学路と消耗品
2016年8月の記事
発達障害ママの日常 何か違う…気づいた次男の異変 発達障害と共に~それは自分探しの旅 アスペルガー症候群と知ってから
2016年7月の記事
私と母と、生活保護費の受給 生活保護を受けた祖母 
2016年6月の記事
交通事故で変わった生活と物の見方 車椅子での外出で思うこと 松葉杖での長期生活で感じた事 都内の大病院でのトイレ体験
2016年5月の記事
母子父子寡婦福祉資金貸付で高校入学 ヘルパーさんのサポートを得て ひとり親家庭等医療費助成を利用して
2016年4月の記事
私の健康法はウォーキング! 散歩と油絵などの趣味 定年退職後の新生活 
2016年3月の記事
知的障害者施設での作業ボランティア 児童養護施設での遊びのボランティア 地域での介護指導 特別養護老人ホームでのボランティア
2016年2月の記事
重度発達障害の次男との生活 自閉症児育児は山あり谷あり
2016年1月の記事
私が介護の仕事を始めるまで 介護の仕事から感じたこと
2015年12月の記事
ボランティアで子供を支援! わたしのボランティア活動 傾聴ボランティアを始めて
2015年11月の記事
精神障害者手帳の入手 試して体によかったこと うつ病と散歩 統合失調症から学んだこと
2015年10月の記事
双極性障害と訪問看護師の力 躁うつ病発覚から復帰に向けて 急増中!管理職の“鬱病” 強迫性障害から脱出して得た身軽さ 過労からうつ病になった体験
2015年9月の記事
うつ病の体験 気付けなかったパニック障害 うつ病を経験して 不安神経症から教わったこと
2015年8月の記事
双極性障害を発症して うつの発症から好転まで うつ病と障害者手帳
2015年7月の記事
買い物時の何気ない苦労 道のバリアフリー 初めての一人旅 身近に潜むバリア
2015年6月の記事
子連れでの買い物1 子連れでの買い物2
2015年5月の記事
てんかんと運転免許~前編~ 人生の価値を高める職業 てんかんと運連免許~後編~ 年金受給で残る将来への不安 初めての電動車椅子と青春 衝撃!夜勤中に起きた出来事 ヘルパーの資格を取得~前編~ ヘルパーの資格を取得~後編~ 後見人の苦労話
2015年4月の記事
介護保険を活用しよう 膠原病との戦いの始まり 介護サービスを受けるという事 おしゃれな杖で出掛けよう♪ 災害時の障害者対応
2015年3月の記事
老老介護の負担を軽く 介護施設について思うこと 刺激になったショートステイ
2015年2月の記事
自立に向けて 問題点だらけの生活保護 祖母と孫と生活保護 生活保護受給までの道のり 生活保護受給で楽になったこと 祖母の一人暮らし 期間限定!生活保護受給
2015年1月の記事
安心して働ける工夫 放課後、どう過ごさせる? 我が家の子供たち三人の日常 沢山の支えがあって 「小1の壁」を乗り切ろう 両親の協力を得て