公共トイレが使いやすいかどうかによって、外出時の安心感が違ってきます。車椅子利用者だけではなく、高齢者や赤ちゃん連れの人など誰もが快適に利用できる多目的タイプが増えています。
以前、段差がなく広いスペースを設けているトイレのことは『身障者用トイレ』または『車椅子用トイレ』などと呼ばれていました。
しかし、今では車椅子利用者に限らず、高齢者や人工肛門をつけている人、高齢者、赤ちゃんを連れた人など様々な理由から一般の公共トイレを使いにくいと感じている人にも対応できるようになっています。
『多目的トイレ』をはじめ、『多機能トイレ』、『みんなのトイレ』、『だれでもトイレ』というように呼び名も変わりました。
多目的トイレには、便器のほか、手すりや赤ちゃんのおむつ交換用ベッドなどが備えられています。
車椅子利用者用、オストメイト対応、乳児用に分けて、多目的トイレの主な設備を紹介しましょう。
便器周りは車椅子でスムーズに方向転換ができるように、十分なスペースがあります。横の壁には手すりが付いています。また、トイレによっては、便座の部分に背もたれや肘掛けが付いている場合もあります。
背もたれや肘掛けなどがあることで、楽に座ることができます。さらに、ドアや手すりと便器との位置関係が、車椅子利用者にとっては重要なポイントになります。
個々の身体状況により、適切な位置が異なるため、できるたけ多くの人が使いやすいような配慮が必要です。
病気や事故などによって消化管や尿管が損なわれ、腹部にストーマと呼ばれる人工肛門や人工膀胱をつけている人のことをオストメイトと言います。
このような人は、腹部の排泄口に付けられたパウチ(袋)に排泄物を溜めます。そのため、パウチに溜まった排泄物をトイレに流さなければいけません。
そのときに、オストメイト対応の設備があれば、シャワー洗浄なども可能で、楽に排泄物を流すことができます。
多目的トイレには、赤ちゃんのためのおむつ交換用ベビーシートがついていることも多いです。転落防止のベルトが付いています。折り畳み式になっているので、使用後は畳んで収納しておけるため、邪魔になりません。
上記の設備以外に、多目的トイレには様々な工夫が施されています。どのような設備があるかは、トイレによって異なります。
トイレに入ると、センサーで自動的に音声案内が流れます。装置本体に付いているボタンを押すことで、さらに詳しい案内を聞くことが可能です。
多目的トイレの自動ドアのボタンは、大きめに作られているので、弱い力でもきちんと押すことができます。指だけではなく、肘や手の甲などでも押すことができ便利です。
また、ボタンの色については、赤・緑、白・黒などトイレによって違いがあります。
男性用の小便器にも、バリアフリー設備が備わっています。便器の上部や左右に手すりが設置されています。
手すりがあると、視覚障害者も便器の位置を見つけやすいですし、足腰の弱い高齢者も手すりによりかかりながら、用をたすことができます。
腕や手に障害がある人の中には、トイレットペーパーをつかんで切る作業が難しい人もいます。自動ペーパーホルダーがあれば、手をかざすだけで一定量の紙が折りたたまれた状態で出てきます。
自動水栓が設置されていることも少なくありません。蛇口部分に手を差し出すと自動で水が出て、手を引くと止まる優れものです。
栓をひねる必要がないため、上肢に障害のある人や栓に手が届きにくい人も、簡単に使うことができます。
身長の高い人から低い人まで、楽に手が洗える洗面台が設置されている場合もあります。
通常のものだけでなく、洗面台が低い位置にもあれば、車椅子利用者や小さな子供なども使いやすいです。
多目的トイレによっては、仕切り用のカーテンが付いているところがあります。これは、障害のある人が用をたしている間、介助者から見えないようにするためのものです。
トイレを使うことはデリケートな行為なので、このような配慮をすることも大切です。